Coloso.「視線誘導に特化した読みやすい漫画の作り方」漫画家 山田金鉄 先生の講座で紹介された『荒木飛呂彦の漫画術』で荒木先生自身が『岸辺露伴は動かない 富豪村』は会心作との記述があったので入手してみました。
今回は『岸辺露伴は動かない 富豪村』を「SAVE THE CATの法則」を使って分析していきたいと思います。
Coloso.「視線誘導に特化した読みやすい漫画の作り方」漫画家 山田金鉄
https://coloso.jp/illust_webtoon/cartoonist-yamada-jp
荒木飛呂彦先生と言えば『ジョジョの奇妙な冒険』ですが、私は読んだことがありません。岸辺露伴シリーズは『ジョジョ』のスピンオフ作品ということですが今回は『富豪村』のみに焦点を当てて、ブレイク・スナイダー・ビート・シートに沿って私なりに分析していきます。『荒木飛呂彦の漫画術』には先生自身の分析も載っているので是非読んでみてください。
『富豪村』は豪邸のみが建っている道路や送電線のない山奥の村にマンガ家である露伴と別荘地購入希望の女性編集者が取材に行く話です。
では10種類のジャンルから『富豪村』の脚本の分類をしてみましょう。
・家の中のモンスター
・金の羊毛
・魔法のランプ
・難題に直面した平凡な奴
・人生の節目
・バディとの友情
・なぜやったのか?
・バカの勝利
・組織の中で
・スーパーヒーロー
やはりこれも取材に行くのが目的なので金の羊毛ですね。
それではストーリーを分析していきましょう。(以下ネタバレを含みます)
「SAVE THE CATの法則」の著者はひとつの物語をブレイク・スナイダー・ビート・シートを使って書き出しています。
ブレイク・スナイダー・ビート・シート
脚本のタイトル:岸辺露伴は動かない 富豪村
ジャンル:金の羊毛
作者:荒木飛呂彦
ログライン(脚本の内容を1行で簡潔に説明したもの)
豪邸のみが建っている周囲から遮断された山奥の村にマンガ家である露伴と別荘地購入希望の女性編集者が取材に行く話
脚本の構成を以下の15の展開に分けてみよう。
1.オープニング・イメージ・・・主人公の出発点
2.テーマの提示・・・脚本家の論点・主張
3.セットアップ・・・主要人物全員登場・主人公が勝つためにはどのように変化すべきかの提示
4.きっかけ・・・テーゼの世界が変わる
5.悩みの時・・・何かしらの疑問を抱く
6.第1ターニング・ポイント・・・主人公の意思で出発
7.サブプロット・・・ラブストーリー・一息入れる
8.お楽しみ・・・作品の核心部
9.ミッド・ポイント(見せかけの成功)・・・いきなり危険度アップ
10.迫りくる悪い奴ら
11.すべてを失って・・・死の気配
12.心の暗闇・・・悟りのシーン
13.第2ターニング・ポイント・・・主人公は解決策を見出す
14.フィナーレ・・・新しい世界が生まれる
15.ファイナル・イメージ・・・オープニングイメージと対になる
第1ターニングポイントを探してみましょう。はじめは富豪村の話を懐疑的に聞いていた露伴だが、その住人たちが25歳の時に土地を購入し大富豪になっていったこと、また別荘地購入希望の女性編集者が25歳であることを聞き、興味をそそられます。
これで物語が動き始めます。
そうその場面、詳細トレースをした上の右ページ1コマ目です。ここが第1ターニングポイント。
第2ターニングポイントは『山の神々』とのマナーバトルで追い詰められた露伴が解決策を見出す場面です。
そう左ページ最後のコマです。
後は当てはめていけばいいでしょう。
1.オープニング・イメージ・・・漫画を描くための準備体操、贅沢に3ページです。荒木先生凄い!
2.テーマの提示・・・次回作に女性編集者が『山奥の別荘』を買いに行く話を提案する
3.セットアップ・・・興味をそそる富豪村の話を説明する
4.きっかけ・・・1区画だけ売りに出されていることを知る
5.悩みの時・・・格安であることに疑問を抱く
6.第1ターニング・ポイント・・・住人が25歳で土地を購入し皆富豪になり、購入希望の女性編集者も25歳であることに興味を抱く
7.サブプロット・・・ヒナ鳥を拾う
8.お楽しみ・・・富豪村到着、不気味な子供に出迎えられる
9.ミッド・ポイント(見せかけの成功)・・・すでに3つのマナー違反を犯していることを指摘される
10.迫りくる悪い奴ら・・・再トライを希望する
11.すべてを失って・・・編集者の身内が三人死ぬ
12.心の暗闇・・・敵の正体は『山の神々』であることを知る
13.第2ターニング・ポイント・・・編集者を助けるため次の課題に解決策を見出す
14.フィナーレ・・・編集者は助かる
15.ファイナル・イメージ・・・ヒナ鳥も生き返る
荒木先生と言えば身体表現の巧みさでしょう。苦手な美術解剖学をどのくらい表現すべきかな?と考え『ザ・ラン』から筋肉表現がわかる場面を取り出してみました。
参考にもう一枚トレースしてみました。
着衣の身体表現と表紙絵の露伴先生のドアップです。
露伴は漫画家なので左ページの服の中にピアス・ベルト・襟・袖などペンのモチーフがちりばめられておりこの辺が少年漫画的だなと思いました。
『荒木飛呂彦の漫画術』ではヒットを飛ばしながら長年業界を生き抜いてきた荒木先生のノウハウがたくさん詰め込まれています。
私的には、キャラクターの身上調査書や時代に合わせた絵を描くなど参考になる部分がたくさんありました。
露伴も眉が細く中性的ですよね。時代に合わせるため眉を細く描くのに意識して努力したと書いてあり進化し続けていらっしゃるんだなと思いました。
私の絵はまだ固まっていません。若いころの経験から創作ばかりしていると一定以上うまくならない気がします。なのでまだまだドローイングをしていき自分の絵が落ち着いていく先を見てみたいと思います。
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