映画・漫画の分析

映画『ラ・ラ・ランド』を分析する

ラ・ラ・ランド トレース
おなじみ、2016年に公開されたロマンティック・ミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』、6部門の米アカデミー賞を受賞しました。(画像はトレースです。トレースしてみるとライティングが素晴らしいのがよくわかります。私が写真を見てドローイングすると、写真の人物よりなぜか年上に描きあがります。なんでだろう?あごを長く描く癖があるのかな?この写真のエマ・ストーンもトレースのほうが年上に見えます。なんでだろう?トレースなのに…独り言はさておき)私も大好きで映画館に3度足を運びました。なんといっても圧巻はオープニングの高速道路での"Another Day of Sun"歌唱シーンでしょう。何度見ても鳥肌が立ちます。現在はテレビでBGMとしてもよく使われ浸透していますね。
監督・脚本は前作セッションで注目を集めたデイミアン・チャゼル(この作品もよかった!監督の「映画を作りたい!」という吹き上がるような情熱を感じました)、主演ライアン・ゴズリング、エマ・ストーンです。この二人は『L.A.ギャングストーリー』『ラブ・アゲイン』でも共演しています。


私はライアン・ゴズリングが大好きで出演作のほとんどを見ています。演技に対する真面目さ、狂気と無防備な人間味が共存する演技が素晴らしいです。『ラ・ラ・ランド』では自分の店を開く夢を見るジャズピアニスト セブを演じていますが、実際にピアノの特訓を行いすべてのシーンを演奏しています。『きみに読む物語』では家を建てるシーンがあることから大工見習として作中に登場する椅子やテーブルを作ったそうです。正面から深く真面目に作品に取り組むライアンの姿勢がうかがえます。素晴らしい!大好き!
私的に一番のおすすめは…
チエ(仮)
そらまめ
落ち着いて、主題を見失っているよ。
おっと失礼、また興奮しちゃった。コホン、気を取り直して今回は『ラ・ラ・ランド』を「SAVE THE CATの法則」を使って分析していきたいと思います。ラ・ラ・ランドは「10のストーリー・タイプから学ぶ脚本術」でも分析されていないので私の独自解釈になります。ご了承ください
チエ(仮)

SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術
この本ではすべての脚本を10種類のジャンルに分類されるとしています。この分類はコメディとかラブストーリー・伝記物とかいう分類ではありません。物語の本質をとらえた分類なんです。詳細は読んでみてね。その10種類とは以下の通りです。

・家の中のモンスター
・金の羊毛
・魔法のランプ
・難題に直面した平凡な奴
・人生の節目
・バディとの友情
・なぜやったのか?
・バカの勝利
・組織の中で
・スーパーヒーロー

『ラ・ラ・ランド』はセブとミアのラブストーリーなので「バディとの友情」になります。
それではストーリーを分析していきましょう。(以下ネタバレを含みます)

SAVE THE CATの法則」の著者はひとつの物語をブレイク・スナイダー・ビート・シートを使って書き出しています。

ブレイク・スナイダー・ビート・シート
脚本のタイトル:ラ・ラ・ランド
ジャンル:バディとの友情
監督:デイミアン・チャゼル 脚本:デイミアン・チャゼル
日付:2017年日本公開

ログライン(脚本の内容を1行で簡潔に説明したもの)
自分の店を開く夢を持つジャズピアニストと女優になりたい女のロマンティック・ミュージカル

そらまめ
さて、ここからが分析だよ
ネタバレを含みます。脚本の構成を以下の15の展開に分けてみよう。 それぞれの意味について簡潔に説明してるけど、詳しくは「SAVE THE CATの法則」を読んでみてね。まず、第1ターニングポイントを見つけてみよう
チエ(仮)

1.オープニング・イメージ・・・主人公の出発点
2.テーマの提示・・・脚本家の論点・主張
3.セットアップ・・・主要人物全員登場・主人公が勝つためにはどのように変化すべきかの提示
4.きっかけ・・・テーゼの世界が変わる
5.悩みの時・・・何かしらの疑問を抱く
6.第1ターニング・ポイント・・・主人公の意思で出発
7.サブプロット・・・ラブストーリー・一息入れる
8.お楽しみ・・・作品の核心部
9.ミッド・ポイント(見せかけの成功)・・・いきなり危険度アップ
10.迫りくる悪い奴ら
11.すべてを失って・・・死の気配
12.心の暗闇・・・悟りのシーン
13.第2ターニング・ポイント・・・主人公は解決策を見出す
14.フィナーレ・・・新しい世界が生まれる
15.ファイナル・イメージ・・・オープニングイメージと対になる

「第1ターニング・ポイント」はミアがボーイフレンドとの食事会の最中セブが弾いていた曲を耳にし、彼に別れを告げ(自らの意思で)セブの待つ映画館に向かい二人の交際が始まる場面です。ここから二人はお互いに夢を追いながらデートを重ねていきます。今までの世界とは違う2幕の始まりです。
「第2ターニング・ポイント」はセブの説得を受けミアがオーディションを受ける場面です。ここで主人公は解決策を見つけ新しい世界が始まります。
残りは当てはめていくと簡単に見つかります。

1.オープニング・イメージ 高速道路の大渋滞
2.テーマの提示 夢の提示、セブはジャズの店・ミアは女優
3.セットアップ セブはバーを解雇され、ミアを邪険に扱う
4.きっかけ パーティでセブとミアは再開する
5.悩みの時 二人の約束の日、ミアはボーイフレンドとの先約を思い出す
6.第1ターニング・ポイント ミアはセブの待つ映画館へ向かう
7.サブプロット セブはバンドへ加入する
8.お楽しみ 二人は夢を追いながらデートを重ねる
9.ミッド・ポイント(見せかけの成功) セブの加入したバンドは大成功する
10.迫りくる悪い奴ら ミアはセブにジャズの店を開く夢はどうなったのか問いただし大喧嘩になる
11.すべてを失って ミアは公演に失敗したと思いボウルダーシティーに帰る
12.心の暗闇 夢は終わったというミアをセブは説得する
13.第2ターニング・ポイント ミアはオーディションを受ける
14.フィナーレ ミアは大女優になる
15.ファイナル・イメージ 高速道路を降りたミア夫婦は偶然セブの店に入る

どうでしょう?1本の映画を分析してみると今まで見えなかったものが見え、「ああこのシーン大事だったんだ」「オープニングとエンディングが呼応してる」「このビート・シートで構成を考えると王道の展開っぽいよね」など、新しい発見があります。
映画は2時間程度で終わる凝縮された物語です。みなさんもたくさん観て分析してみてくださいね。きっと今までにない発見があるはずです。

物語を俯瞰して見たうえで自分の物語のどこに見どころを持ってくるかを考える手掛かりになると思います。
チエ(仮)
そらまめ
ところでさっき言いかけたライアン・ゴズリングの出演作でおすすめって何?気になっちゃった
でしょでしょ、よく聞いてくれました。私のライアンおすすめ作品は次の作品です。特に『ドライヴ』かな。私はこの作品をサイコパスの純愛と呼んでいます。狂気と無防備な人間味が共存するライアンの魅力がたっぷり味わえます。この映画についてもまたの機会に分析したいと思います。
チエ(仮)

LA・LA・LAND


やっぱり、おすすめ1位はラ・ラ・ランドでしょう。ちょっと偏屈なライアンが楽しめます。


きみに読む物語


ラブストーリーの王道『きみに読む物語』、少年ライアンから青年ライアンに成長する記念碑的な作品です。役作りのために大工見習として作った椅子やテーブルちらりと見ることができます。ここにも古い屋敷の改築に没頭するちょっと狂気なライアンを見ることができます。


ドライヴ


子供好きでめったにない笑顔を見せるライアン、エレベータの中で〇〇して〇〇しちゃうライアン、怖いよう~~、狂気です。

『ドライヴ』のニコラス・ウィンディング・レフン監督も『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼル監督も当時新人でしたがこのライアン出演作2作品とも大ヒットし世にその名を知らしめました。ライアン・ゴズリングは新人監督を世に送り出す天使なのです!
チエ(仮)
そらまめ
わかったわかった。オタクは好きなものを語ると冷静でいられないね。逆にお薦めじゃないのはある?
う~ん、『ブルーバレンタイン』かな?タイトル通りブルーになります。別れそうなカップルをあと一押ししてしまうでしょう。それはさておき、頑張っていっぱい伝えたのですっきりした。ライアンのファンがいっぱい増えるといいな。また来日してくれるかな?前回来日の時のラ・ラ・ランド観覧のチケット争奪戦は敗れたけど今度こそ!!!ちなみに私の長編マンガではライアンをモデルにしたキャラクターが登場します。
チエ(仮)
そらまめ
えっどんな役なの?
向こう見ずな主人公に大人の示唆を与える役だよ。キャラクターのモデルになる人物も今後紹介していきます。ふう、それではまた。
チエ(仮)
そらまめ
う~ん、楽しみ!

-映画・漫画の分析